受動態とは?
受動態(passive voice)は、主語が動作を受ける立場であるときに使われる文法構造で、特に「何がされたか」に焦点を当てたいときに用いられます。受動態は、「be動詞 + 過去分詞」という構造で成り立ち、文中の主語が動作を行うのではなく、その動作の影響を受ける対象となっていることを示します。英語では、ビジネス文書や公式な文章で頻繁に使われ、事実を客観的に伝えたいときや、行為者よりも出来事そのものに注目したい場合に効果的です。
受動態と能動態の違い
例えば、能動態の文「The manager completed the project.(マネージャーがプロジェクトを完了した)」は、動作の主体である「マネージャー」に焦点が当たっています。一方、これを受動態にして「The project was completed by the manager.(プロジェクトがマネージャーによって完了された)」とすると、文の焦点が「プロジェクトが完了した」という結果に移ります。このように、受動態を使うことで、動作の主体よりも、その動作が及んだ結果に重点を置くことができます。
チェックポイント
- 受動態の構造を理解しているか?
受動態の構造は「be + 過去分詞」であり、「be動詞」が時制や文脈に応じて変化し、過去分詞が動詞の意味を示します。 - 自動詞と他動詞の違いを理解しているか?
受動態は、目的語を取る他動詞のみが使用できます。自動詞には目的語がなく、受動態にすることができません。 - 「by + 行為者」の使い方を理解しているか?
受動態の文では、動作の主体(行為者)を「by + 行為者」で補足することができます。行為者が重要でない場合には省略されます。
例文と解説
例文1: The project was completed on time.
日本語訳:「プロジェクトは時間通りに完了しました。」
解説:この文では、主語である「project」が「完了された」対象として表現されています。行為者が省略されているため、文の焦点は「完了したことそのもの」にあります。
例文2: The report was reviewed by the manager.
日本語訳:「レポートはマネージャーによって確認されました。」
解説:この文では、「report」が主語であり、確認された対象となっています。行為者「manager」は重要な情報のため、「by the manager」と明示されています。
例文3: The package was delivered yesterday.
日本語訳:「荷物は昨日配達されました。」
解説:この文では、「package」が主語で、「配達された」という動作の影響を受けていることを示しています。行為者が省略されており、配達の事実だけが強調されています。
受動態を用いるメリットと注意点
- 情報の焦点を操作できる:受動態を使うことで、行為者ではなく動作の影響を受けたもの(動作の対象)に焦点を当てられます。
- 他動詞のみが受動態にできる:自動詞は目的語を取らず、受動態にはできません。TOEICの文法問題では、動詞が他動詞であるかを確認するのがポイントです。
- 「by + 行為者」を適切に使用する:行為者が特定されていない場合や、重要でない場合には省略し、行為者が重要な場合には「by + 行為者」を付けて明確にします。
学習のポイント
- 構造を正確に理解する:受動態の「be動詞 + 過去分詞」の構造を意識し、異なる時制(過去形、現在形、未来形、完了形など)でも構造が維持されることを確認しましょう。
- 受動態での他動詞の使用:自動詞には受動態が存在しないため、TOEICの問題では、まず動詞が他動詞であるかどうかを確認するのがポイントです。
- ビジネス文書でも頻出することを理解する:受動態は事実や状況を客観的に伝えるため、ビジネス文書で頻繁に使用されます。
受動態に関するTOEICの出題傾向
- 受動態の構造を問う問題:受動態の基本構造(be動詞 + 過去分詞)を理解しているかを問われます。受動態であることに気づけば、正しい動詞の形を選べます。
- 他動詞と自動詞の違いに基づく選択問題:受動態に適した他動詞を選ばせる問題が多く、選択肢に自動詞が含まれることがあります。
- 行為者(by + 行為者)の有無を問う問題:行為者が重要かどうかを判断することで、文の意味を明確にする問題も出題されます。
ビジネス文書での活用
ビジネス文書では、受動態を使用することで、文の客観性やフォーマルさを高めることができます。ビジネス文書では、目的や対象読者に応じて能動態と受動態を使い分けることで、効果的なコミュニケーションが可能になります。
- 能動態: 主体の行動や責任を強調したい場合に適しており、動作を行った「誰」が重要な場面で使います。
- 受動態: 客観性やフォーマルさを高めたい場合、または動作の結果や対象に焦点を当てたい場合に適しています。
以下の例文を参考にしてください。
例文1
能動態: We completed the project on schedule.
受動態: The project was completed on schedule.
ニュアンスの違い:
- 能動態:
- 焦点は「We(私たち)」、つまりプロジェクトを完了した主体にあります。
- 文中で「We」を強調することで、主体が明確になり、「チームの成果」を伝えたい場合に適しています。
- 例: プロジェクト報告書や社内プレゼンテーションなどで、「誰が完了したのか」を伝える場合。
- 受動態:
- 焦点は「The project」、つまり動作の結果そのものにあります。
- 主体(We)は省略されており、客観的でフォーマルな印象を与えます。
- 例: クライアント向けの報告書や公式文書で、「プロジェクトが完了した事実」を強調する場合。
例文2
能動態: The HR department reviewed the applications.
受動態: The applications were reviewed by the HR department.
ニュアンスの違い:
- 能動態:
- 焦点は「HR department(人事部)」、つまり応募書類を確認した主体にあります。
- 「HR department」を明示することで、組織の責任範囲や行動を強調したい場合に適しています。
- 例: チーム内で作業状況を共有する内部の文書や、責任者を明示したい場面。
- 受動態:
- 焦点は「The applications」、つまり「応募書類が確認された事実」にあります。
- 行為者を「by the HR department」と補足することで、必要に応じて主体を明示することも可能です。
- 例: 応募者向けの公式な通知や、主体にあまり注目を置かず事実を淡々と伝えたい場合。
例文3
能動態: The supplier delivered the materials yesterday.
受動態: The materials were delivered yesterday.
ニュアンスの違い:
- 能動態:
- 焦点は「The supplier(サプライヤー)」、つまり材料を配送した主体にあります。
- サプライヤーの行動や責任を明確にしたい場合に適しています。
- 例: サプライチェーンの進捗報告や、特定の業者の貢献を強調したい場合。
- 受動態:
- 焦点は「The materials」、つまり「材料が配送された事実」にあります。
- 主体(The supplier)は省略されており、配送の事実そのものを強調します。
- 例: 発送完了の通知や、主体よりも「配送された結果」を伝えることが重要な場合。
受動態を使用する際のメリットと注意点
受動態のメリット:
- 客観性:
主体を明示せず、事実に焦点を当てることで、中立的でフォーマルな印象を与える。- 例: “The issue was resolved successfully.”(問題は無事解決されました。)
- フォーマルさ:
公式文書やビジネス報告書で、主体を省略することで洗練された文章になる。- 例: “The decision was made after thorough discussion.”(慎重な議論の後に決定されました。)
- 焦点の操作:
主体ではなく、動作の影響を受けたもの(対象)を際立たせることができる。- 例: “The contract was signed yesterday.”(契約は昨日締結されました。)
受動態の注意点:
- 行為者が不明確になる:
主体を省略すると、責任の所在が分からなくなる可能性がある。- 例: “The report was delayed.”(報告書が遅れました。)→ 誰が遅らせたのか分からない。
- 冗長になる場合がある:
主体を明示する場合、「by + 行為者」を加えると文章が長くなる可能性がある。- 例: “The meeting was organized by the administrative team.”
→ “The administrative team organized the meeting.”(能動態の方が簡潔)
- 例: “The meeting was organized by the administrative team.”
- 文が受け身的に感じられる:
受動態を多用すると、主体性が欠けた印象を与える場合がある。
練習問題
練習問題1: 受動態への書き換え
以下の能動態の文を受動態に書き換えてください。
- The team won the championship.
- The technician repaired the computer.
- The company will launch a new product next year.
- The manager has approved the proposal.
- The artist painted a beautiful portrait.
解答例:
- The championship was won by the team.
- The computer was repaired by the technician.
- A new product will be launched by the company next year.
- The proposal has been approved by the manager.
- A beautiful portrait was painted by the artist.
練習問題1の解説とポイント
受動態に書き換える際には、以下の3つのステップを踏むとスムーズに行えます。
ステップ 1: 文の要素を確認する
能動態の文を受動態に書き換えるには、まず文の主語、動詞、目的語を確認します。受動態では、目的語が主語の位置に来るため、この関係性を把握することが重要です。
例:
能動態: The team won the championship.
- 主語: The team
- 動詞: won
- 目的語: the championship
ステップ 2: 受動態の構造に変換する
受動態の基本構造は以下の通りです:
「目的語(新しい主語) + be動詞(時制に応じて変化) + 過去分詞」
- 目的語を主語に変更する
- be動詞を元の動詞の時制に合わせて変化させる
- 動詞を過去分詞形にする
例:
能動態: The team won the championship.
受動態: The championship was won by the team.
ステップ 3: 必要に応じて「by + 行為者」を追加
行為者が特定されている場合、「by + 行為者」を文末に加えます。ただし、行為者が重要でない場合や既に文脈で明らかな場合は省略できます。
各例文の解説
- The team won the championship.
- 主語: The team
- 動詞: won(過去形)
- 目的語: the championship
受動態:
- 新しい主語: The championship
- 動詞: was won(過去形のbe動詞「was」+ 過去分詞「won」)
- 行為者: by the team
完成文: The championship was won by the team.
- The technician repaired the computer.
- 主語: The technician
- 動詞: repaired(過去形)
- 目的語: the computer
受動態:
- 新しい主語: The computer
- 動詞: was repaired(過去形のbe動詞「was」+ 過去分詞「repaired」)
- 行為者: by the technician
完成文: The computer was repaired by the technician.
- The company will launch a new product next year.
- 主語: The company
- 動詞: will launch(未来形)
- 目的語: a new product
受動態:
- 新しい主語: A new product
- 動詞: will be launched(未来形のbe動詞「will be」+ 過去分詞「launched」)
- 行為者: by the company
完成文: A new product will be launched by the company next year.
- The manager has approved the proposal.
- 主語: The manager
- 動詞: has approved(現在完了形)
- 目的語: the proposal
受動態:
- 新しい主語: The proposal
- 動詞: has been approved(現在完了形のbe動詞「has been」+ 過去分詞「approved」)
- 行為者: by the manager
完成文: The proposal has been approved by the manager.
- The artist painted a beautiful portrait.
- 主語: The artist
- 動詞: painted(過去形)
- 目的語: a beautiful portrait
受動態:
- 新しい主語: A beautiful portrait
- 動詞: was painted(過去形のbe動詞「was」+ 過去分詞「painted」)
- 行為者: by the artist
完成文: A beautiful portrait was painted by the artist.
練習問題2: 正しい形の選択
次の文を完成させるのに最適な動詞の形を選びなさい。
- The report ______ (review) by the supervisor yesterday.
- a) is reviewed
- b) was reviewed
- c) reviews
- d) reviewed
- The building ______ (construct) by a well-known company.
- a) is constructed
- b) constructed
- c) was constructing
- d) constructs
- A new marketing strategy ______ (develop) for the product launch.
- a) has been developed
- b) is developing
- c) develops
- d) was developed
解答:
- b) was reviewed
- a) is constructed
- a) has been developed
練習問題2の解説とポイント
1. The report ______ (review) by the supervisor yesterday.
選択肢:
a) is reviewed
b) was reviewed
c) reviews
d) reviewed
正解: b) was reviewed
解説:
- 文中に「yesterday(昨日)」があるため、この文は過去形で表現する必要があります。
- 主語「The report(報告書)」が動作を受ける対象であるため、受動態が適切です。
- 受動態の過去形は「was + 過去分詞」なので、「was reviewed」が正解となります。
完成文:
The report was reviewed by the supervisor yesterday.
(報告書は昨日スーパーバイザーによって確認されました。)
2. The building ______ (construct) by a well-known company.
選択肢:
a) is constructed
b) constructed
c) was constructing
d) constructs
正解: a) is constructed
解説:
- この文には具体的な時制を示す表現(例: yesterday, last yearなど)がありません。したがって、一般的な現在の状況を表す「現在形」が適切です。
- 主語「The building(建物)」が動作を受ける対象であるため、受動態が適切です。
- 受動態の現在形は「is + 過去分詞」なので、「is constructed」が正解です。
完成文:
The building is constructed by a well-known company.
(その建物は有名な会社によって建設されています。)
3. A new marketing strategy ______ (develop) for the product launch.
選択肢:
a) has been developed
b) is developing
c) develops
d) was developed
正解: a) has been developed
解説:
- この文では、「for the product launch(製品発売のために)」という文脈があり、開発が完了している状態を現在に関連付けて述べています。そのため、「現在完了形」が適切です。
- 主語「A new marketing strategy(新しいマーケティング戦略)」が動作を受ける対象であるため、受動態が必要です。
- 現在完了形の受動態は「has been + 過去分詞」なので、「has been developed」が正解です。
完成文:
A new marketing strategy has been developed for the product launch.
(製品発売のために新しいマーケティング戦略が開発されました。)
練習問題3: 行為者を特定する
次の文で「by + 行為者」を加える場合の適切な行為者を選びなさい。
- The email was sent ______.
- a) by the assistant
- b) by the computer
- c) by the desk
- The building was designed ______.
- a) by a famous architect
- b) by the workers
- c) by the materials
- The event was organized ______.
- a) by the marketing team
- b) by the attendees
- c) by the location
解答:
- a) by the assistant
- a) by a famous architect
- a) by the marketing team
練習問題3の解説とポイント
この練習問題では、受動態の文に「by + 行為者」を加える際、適切な行為者を選ぶ練習をします。行為者は文脈上、動作を実際に行った主体である必要があります。この問題のポイントは、「動作を行うことが可能な主体かどうか」を文脈から判断することです。
問題ごとの解説
1. The email was sent ______.
選択肢:
a) by the assistant
b) by the computer
c) by the desk
正解: a) by the assistant
解説:
- 「メールを送信する」動作を行う主体として適切なのは、人間または人間が操作する機器です。
- **a) by the assistant(アシスタントによって)**は、人間が行為者として妥当です。
- 一方、**b) by the computer(コンピュータによって)**は場合によって可能ですが、ここでは自然な解釈として「アシスタント」が適しています。
- **c) by the desk(机によって)**は不適切です。机は行為を行う主体になれません。
完成文:
The email was sent by the assistant.
(そのメールはアシスタントによって送信されました。)
2. The building was designed ______.
選択肢:
a) by a famous architect
b) by the workers
c) by the materials
正解: a) by a famous architect
解説:
- 「建物を設計する」という動作は、通常、建築家や設計士が行います。
- **a) by a famous architect(有名な建築家によって)**は、設計の動作を行える主体として適切です。
- **b) by the workers(作業員によって)**は、設計ではなく建物の建設に関与する可能性が高いので不適切です。
- **c) by the materials(素材によって)**は論理的に不可能です。素材が設計を行うことはありません。
完成文:
The building was designed by a famous architect.
(その建物は有名な建築家によって設計されました。)
3. The event was organized ______.
選択肢:
a) by the marketing team
b) by the attendees
c) by the location
正解: a) by the marketing team
解説:
- 「イベントを企画する」という動作は、通常、イベントの運営を担当するチームやスタッフが行います。
- **a) by the marketing team(マーケティングチームによって)**は、企画の主体として最も適切です。
- **b) by the attendees(参加者によって)**は、参加者が企画するケースはまれであるため不適切です。
- **c) by the location(会場によって)**は、場所が動作を行う主体になることはありません。
完成文:
The event was organized by the marketing team.
(そのイベントはマーケティングチームによって企画されました。)
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