過去分詞の形容詞的用法には、次の2種類があります。
- 限定用法(Attributive adjectives) – 名詞の前に置かれる。
- 叙述用法(Predicative adjectives) – 連結動詞(be, become, seem, look, feel, appear など)の後に置かれる。
それぞれ、物事・出来事・状態をどのように捉えるかという認知的視点が異なる ことがポイントです。
1.1. 限定用法の過去分詞形容詞
定義
限定用法の形容詞は修飾する名詞の前 に置かれ、その名詞に関する事前の情報を提供 します。
例文
文 | 過去分詞(形容詞) | 認知文法の視点からの説明 |
---|---|---|
The damaged goods were returned.(破損した商品が返品された。) | damaged | 「damaged」は商品(goods)の状態を説明 しており、「破損する行為」ではなく「破損した状態」に焦点がある。 |
She fixed the broken window.(彼女は壊れた窓を修理した。) | broken | 「broken」は窓の状態を示す(壊れた窓)。「壊れる」という行為は強調されていない。 |
We discarded the used paper cups.(使用済みの紙コップを捨てた。) | used | 「used」は紙コップの状態を表す(すでに使用済み)。「使う」という行動自体には注目していない。 |
They bought an imported car.(彼らは輸入車を買った。) | imported | 「imported」は車の特徴を説明 しており、「輸入された」という過去の出来事ではなく「輸入車という種類」に焦点がある。 |
認知文法の視点
- 「物」ベースの概念化(Thing-based construal)
限定用法で過去分詞が形容詞として使われる場合、焦点は行為そのものではなく、結果としての状態や性質 に移る。 - 行為は背景化される(backgrounding of the action)
そのため、過去に起こった出来事(壊れた、輸入された等)は意識されず、名詞の現在の特性として認識される。 - すでに完了した出来事の結果としての状態
過去分詞を限定用法として使うと、「その行為がすでに完了しており、その影響が名詞の現在の性質として残っている」 という意味合いを持つ。
1.2. 叙述用法の過去分詞形容詞
定義
叙述用法の形容詞は、連結動詞(be, become, seem, look, feel, appear など)の後に置かれ、動作の結果としての状態を表す。
例文
文 | 過去分詞(形容詞) | 認知文法の視点からの説明 |
---|---|---|
The goods are damaged.(その商品は破損している。) | damaged | 現在の状態に焦点を当てており、「破損する行為」よりも「今どうなっているか」に着目している。 |
The window was broken for days.(その窓は何日も壊れたままだった。) | broken | 窓の状態が持続していたことを示す。「壊れる行為」ではなく、「壊れていた状態」に注目している。 |
The car looks used.(その車は使用済みに見える。) | used | 「looks used」は観察による印象を表す。実際に「使われた行為」には焦点を当てていない。 |
The office has been renovated.(そのオフィスは改装された。) | renovated | 「改装された」という行為ではなく、現在の状態に焦点がある。 |
認知文法の視点
- 「状態」ベースの概念化(State-based construal)
叙述用法では、過去分詞が 「過去の行為によって生じた現在の状態」 を表す。 - 行為は間接的に関与(implicit action involvement)
形容詞としての過去分詞は、依然として過去の出来事と関連しているが、この構造ではその出来事の過程よりも状態の方が強調される。 - 行為者(agent)は省略されることが多い
叙述用法では、行為者が省略されることが多く、「その状態がどうして起こったのか」よりも「今どうなっているのか」に意識が向かう。
1.3. 限定用法と叙述用法の違い
特徴 | 限定用法 | 叙述用法 |
---|---|---|
位置 | 名詞の前 | 連結動詞の後 |
機能 | 名詞の性質や特徴を説明 | 動作の結果としての状態を説明 |
焦点 | 「名詞そのもの」 に焦点 | 「動作の結果としての状態」 に焦点 |
例文 | The damaged goods were returned. | The goods are damaged. |
認知的な違い | 行為を背景化し、対象の状態に注目 | 動作の結果を強調し、状態を前面化 |
1.4. 認知文法の観点からの重要性
(1) 時間とプロセスの概念化
- 限定用法の過去分詞 → 状態が 「名詞の本質的な属性」 のように扱われる。
- 叙述用法の過去分詞 → 「過去の行為の結果として生じた現在の状態」 として理解される。
例:
- The repaired phone is working well.(repaired → 本質的な属性)
- The phone is repaired.(repaired → 過去の行為の結果)
(2) 受動態との違い
特徴 | 過去分詞(形容詞) | 受動態 |
---|---|---|
焦点 | 名詞の状態・性質 | 動作が名詞に対して行われたこと |
行為者(Agent) | 関係なし | 省略可能だが含めることも可能 |
例文 | The completed project was approved. | The project was completed by the team. |
1.5. まとめ
- 限定用法 → 行為の背景化 → 名詞の特徴を説明
- 叙述用法 → 状態の前面化 → 過去の行為の結果を示す
この違いを理解すると、TOEIC やビジネス英語での 形容詞的な過去分詞の使い方がより正確になる でしょう!
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